吹き抜ける風 ~感覚の共有~


  たける君(仮名)には今、お気に入りのことばがあります。それは、「きったね~」です!使い方はこうです。「林さんのトイレ、きったね~」「林さんのお風呂きったね~」

ま~使い方は合っていますがね。とても楽しそうです。(掃除の得意でないわたしは内心ドキッとしています!)

レッスンに来る度、この気に入った言葉を使っていました。私が、「汚くないよー」と言っても「きったね~」と繰り返していました。

ところが先日。この会話に変化が起きました。「汚くないよー」という私の言葉の中に、林さんはふざけて怒った"ふり”をしている、という感覚を共有することができたのです‼

 たける君は笑いました。とても楽しそうに私の顔を見て笑いました。それは、とても気持ちの良い笑いでした。まるで木々の間を、葉っぱをゆらして通り抜ける風のように爽やかな笑いでした。他人と"言葉のおふざけ”の面白さや、怒った"ふり”を理解し、成長した、たける君の笑いだったのだと思います。

 発達につまずきのある子どものなかには、ことばの裏にあるものを理解できずに、文字通りの理解になってしまったり、"ふり”や冗談を理解できず、お友だちとスムーズな関係を築くのが難しい子どもたちがいます。

たける君のこの変化は、数値に現れるものではありませんし、これができるようになった、というような形に現れる変化でもありません。しかし、人のコミュニケーションにおいて、大変重要なものが芽生えているとのだと思います。


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